電子手帳で物語を書いた日
ワープロ専用機が小型化廉価販売。漢字を含めた日本語がコンピュータで扱える文房具が普及し始めた1980年代後半。次に登場した製品が電子手帳であった。容量も16か32キロバイト。全角数千文字から1万文字程度しか入らない手帳であったが、きれいな文字で電話帳を五十音順に自動整理かつ検索できる点が便利で飛びついた。本当は、物珍しいマイコン仕掛けの道具として購入した。
ポケットに入って、ワープロの変換が使えるなら、物語を書けるのではないかと試した。電子手帳には、メモ帳機能がある。早速、物語を電子手帳で打った。
メモ帳と言っても、1件あたりの文字数が限られていた。最初に勝った電子手帳は、全角256文字、特売で買った薄型は、全角80文字。漢字変換も前者は単文節変換、後者は単漢字変換。液晶画面の狭さも相まって、作成効率はお世辞でも良いとは言えなかった。それでも電子手帳は、パスワードをつけて秘密にすることもできる。
ただ、大画面ワープロ専用機買ってからは電子手帳を使って物語を書くことはなくなった。この文章はスマートフォンのメモ帳アプリで書いている。30年前の電子手帳とスマートフォンの能力差は比べるのが酷である。それでも、ポケットに入る、日本語入力できて手帳になる機器にワクワクしたものである。
